かんたんAI・DX

かんたんシフト自動作成【前編】~新規ソフト不要で業務効率化~

飲食店の店長やマネージャーにとって、毎月のシフト作成は頭の痛い作業です。スタッフの希望を聞き取り、営業に必要な人数を満たし、公平さも考慮してシフト表を作る――その手間は決して小さくありません。実際、ある調査では6割以上の店舗がシフト作成を1時間以内に終える一方で、約9%の店舗は毎回3時間以上もかかっているとの結果が出ています​[1]。特にスタッフ数が多い業態では時間も工数もかさみ、京都の繁華街のように観光シーズンで忙しいエリアではなおさら負担でしょう。

しかし、新たな専用ソフトを開発・導入しなくても、身近なツールを組み合わせてシフト作成業務を大幅に効率化することが可能です。本シリーズでは、2回に分けてその具体的な方法をご紹介します。前編の本記事では、GoogleフォームGoogleスプレッドシートを使ったスタッフ希望シフトの収集方法と、Excel/GoogleシートのSolver(ソルバー)機能を活用したシフト自動割り当て(最適化)について解説します。現場で即実践できるノウハウをまとめていますので、ぜひ参考にしてください。

Googleフォーム+スプレッドシートでスタッフの希望を収集する

シフト作成の第一歩は、スタッフそれぞれの勤務希望や都合の把握です。従来は紙の希望シートやメール・LINEで個別に聞き取っていたかもしれません。しかしこの方法では、店長が情報を手作業で集計する手間がかかり、漏れやミスのリスクもあります。そこでおすすめしたいのがGoogleフォームを使ったオンラインでの希望収集です。

Googleフォームなら、スタッフはスマホやPCから決められたフォームに直接入力するだけ。例えば「名前」「出勤可能な日付と時間帯」「連絡事項」といった項目のフォームを用意しておけば、スタッフ各自が自分のシフト希望を送信できます。店長側では回答が自動でGoogleスプレッドシートに集計され、個別のメール転記やExcel入力が不要になります。これにより、学生アルバイトが多い店舗でも、アルバイトさん達にフォームのURLを共有するだけで簡単に一括して希望を集められるようになります。

図1: スタッフに配布する「希望シフト提出フォーム」の例。

このフォーム活用には費用も特別なITスキルも不要です。Googleアカウントさえ作成すれば誰でも無料でフォームを作成できます。スタッフにとっても、紙に書いて提出するより手軽で、移動中でも自宅からでも期限内ならいつでも回答できる利便性があります。店長にとっては回答がデジタル化されているので、後からスプレッドシート上で並べ替えやフィルタを使って希望状況を把握しやすいというメリットもあります。

Excel/Googleシートでシフトをかんたん自動作成

スタッフの希望が集まったら、次はそれを踏まえて誰をどのシフトに割り当てるかを決めます。経験と勘で手作業調整することもできますが、人数や制約が多いと非常に大変です。そこで活躍するのがExcelに搭載されている「ソルバー」(Solver)機能です[2]。要は「コンピュータが最適なシフトを自動で作ってくれる」機能だと思ってください。

具体的には、先ほど集めた希望データをもとに以下のような条件をExcel上で設定します。

  • 目標:必要なすべてのシフト枠に人員を割り当てる(あるいは人員数の充足や特定の要件の最大化/最小化)。
  • 可変セル:各スタッフを各シフトに割り当てるかどうか(0/1などで表現)。
  • 制約条件:スタッフごとの出勤可能日かどうか、各シフト枠の必要人数、各スタッフの最大勤務日数など。

例えば「各シフト(日付×時間帯)に必要な人数を満たす」「一人のスタッフが同時に複数シフトに入らない」「スタッフAは希望した日だけ出勤可能」等の条件を設定できます。それらをExcelシート上に数式で表現し、ソルバーを実行すると、条件をすべて満たす解(組み合わせ)を自動で探してくれます。うまくいけば、ほんの数秒で「誰がどの日のどの時間帯に入るか」の割り当て表が完成します。

Excelのソルバー機能はExcelリボンの「データ」タブから追加でき、直感的なダイアログで条件設定が可能です(プログラミングは不要です)。Googleスプレッドシートの場合、標準ではソルバーはありませんが、いったんExcelで計算するか、あるいはオープンソースのOpenSolverアドオンを利用する方法もあります。初回は設定に多少時間がかかりますが、一度ひな形を作ってしまえば毎回使い回せます。これにより、店長は複雑なシフト調整作業から解放され、例えば「学生のAさんはテスト期間なので少なめ、フリーターのBさんは多めに入ってもらう」といった微調整に集中できるようになります。人力では試行錯誤に時間を取られていた部分をコンピュータが肩代わりするため、公平かつ効率的なシフト案を短時間で得られるのです。

シフト自動割り当てまで実現できれば、前編の目標は達成です。ここまでで、スタッフの希望回収からシフト表のドラフト作成まで一連の流れがデジタル化・自動化され、大幅な時間短縮と正確性向上が期待できます。後編では、完成したシフトをスタッフへスムーズに周知する仕組み作りや、運用面での更なる工夫について解説し、この取り組みを定着させる方法を考えていきます。

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